日本で働いている外国人の皆さんの中には、すでに日本語能力試験(JLPT)のN2やN1を取得しているものの、職場で日本語でのコミュニケーションに難しさを感じる人が多いではないでしょうか。そのような人が日本語を上達するためにには、JLPTよりも難易度が高い日本語の資格の取得を目指すことは有効でしょう。そこで今回は、JLPTよりもワンランク上の日本語を習得したい人におすすめする語学資格について紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
JLPT以外の日本語資格をとる理由
多くの外国人は、JLPT N1の合格を日本語の勉強の最終目標にしていますが、JLPTで測れる日本語は、日本企業で業務を行う上で活かせない場面があります。なぜなら日本企業の実務では、ビジネス上でのコミュニケーション能力が特に問われます。JLPTは、ビジネスで使える日本語を測るのではなく日本語の基本的なリーディングやリスニングを測る試験です。
つまりJLPT N1を取得していても、日本企業で働くうえにコミュニケーションの支障が出るケースがあります。特に、母国語が中国語の人は漢字が得意のためJLPT N1に合格しやすく、合格しても日本語のスピーキングとリスニングは日常会話レベルの場合があるかもしれません。
また、社会人になると、学生時代のように日本語の勉強に打ち込みできない人も多いではないでしょうか。社会人は自由時間が少ないという理由もありますが、学生時代のように、試験に合格するために勉強することがないので、勉強計画がなかなか実行できないという人もいるかもしれません。
目標を設定して、日本語の向上を目指したい人なら、日本語の資格をとることをおすすめです。資格試験を応募するには受験料のコストがかかり、そして締切があるため、勉強にコミットしやすいというメリットがあります。JLPTは一番知られている日本語の資格ですが、JLPTよりもレベルが高い資格はいくつかありますので、それらの資格を検討してみると良いでしょう。4つの日本語資格を紹介するので参考にしてみてください。
おすすめの日本語語学資格
J.TEST実用日本語検定 B級~特A級
J.TEST実用日本語検定は、1991年から実施されている外国人向けの日本語検定で、年間約5万人が受験しています。
J.TESTには上級者向けの「A-Cレベル試験」と初級~中級者向けの「D-Eレベル試験」、入門者向けの「F-Gレベル試験」がありますが、B級、準A級、A級、特A級はJLPT N1より難易度が高いです。なかにも、特A級は「様々な分野、場面において、専門的な話題も理解し対応できる高度なコミュニケーション能力がある」を基準として、CEFR C2※よりもレベルが高いです。J.TESTは幅広い日本語レベルが測定できる点は特徴で、高度な日本語をチャレンジしたい人におすすめできる試験です。
※語学能力を6段階(A1、A2、B1、B2、C1、C2)で評価する国際的な基準で、A1は初心者レベで、C2はほぼ母国語レベルになります。JLPTはC1(上級者レベル)に当てはまります。
試験詳細(A-Cレベル)
開催スケジュール | 1月、3月、5月、7月、9月、11月 |
受験料 | 2021年3月まで:4,800円 2021年5月から:5,200円 |
出題内容 | 読解試験 ・文法語彙問題 ・読解問題 ・漢字問題 ・記述問題聴解試験 ・写真問題 ・聴読解問題 ・応答問題 ・会話 ・説明問題 |
受験会場 | 年6回(1、3、5、7、9、11月) 札幌、仙台、東京、千葉、埼玉、横浜、静岡、名古屋、京都、大阪、 神戸、広島、福岡 、大分、沖縄年3回(3、7、11月) 茨城、栃木、群馬、石川、岐阜、岡山、高松、熊本 |
日本以外の開催国 | 中国、台湾、韓国、タイ、モンゴル、ベトナム、バングラデシュ、インドネシア、フィリピン、ブラジル、ネパール、ミャンマー |
ホームページ | https://j-test.jp/ |
TOPJ実用日本語運用能力試験 上級A
TOPJ 実用日本語運用能力試験は、外国人向けに日本語の語彙や文法、文型などの基礎能力と、日本社会や日系企業の習慣と文化に対する理解能力を測る試験です。TOPJの特徴は、日本語だけではなく、留学生活や日系企業などの場面を取り上げることにより、日本文化への理解能力も重視される点です。
TOPJのレベルの中では、一番高いレベルである上級AはCEFR C2相当で、JLPT N1よりも難しいです。TOPJの公式サイトによると、ねらいは「会議の場において日本語を用いて日本人と対等に討論し、専門用語や漢字を正しく理解した上で書類作成が出来る能力を有する。また、国内外で展開する日系企業の外国人リーダーとして活躍できる人材となる」ことです。
試験詳細
開催スケジュール | 1月、3月、5月、7月、9月、11月 |
受験料 | 5,000円 |
出題内容 | リスニング ・絵、写真問題 ・会話問題 ・説明問題 ・難読解問題筆記 ・総合問題 ・読解問題 ・日本文化 |
受験会場 | 東京、千葉、神奈川、京都、大阪、福岡、沖縄 |
日本以外の開催国 | 中国、台湾、ベトナム、ネパール、スリランカ |
ホームページ | https://www.topj-test.org/ |
BJT J1+
BJTビジネス日本語能力テストは外国人がビジネスの場における日本語のコミュニケーション能力を測定する検定です。BJTはほぼ毎日実施しており、テストセンターでコンピュータを使って受験する形になるため、受験のスケジュールが調整しやすいです。
BJTは0~800点の点数(スコア)と、点数に応じたJ5~J1+の6段階のレベルで評価されます。BJTはJLPTと同様に、在留資格の申請のために法務省入国管理局から証明基準として認められているというメリットがあります。BJTスコア480点以上はJLPTのN1と同等になるため、BJT480点以上のスコアはN1以上相当と認識してよいかもしれません。特に、一番高いJ1+は「どのようなビジネス場面でも日本語による十分なコミュニケーション能カがある」ことを基準として、かなり高度な日本語が求められます。
試験詳細
開催スケジュール | 随時 |
受験料 | 7,000円 |
出題内容 | 聴解部門 ・場面把握問題 ・発言聴解問題 ・総合聴解問題聴読解部門 ・状況把握問題 ・資料聴読解問題 ・総合聴読解問題読解部門 ・語彙・文法問題 ・表現読解問題 ・総合読解問題 |
受験会場 | 札幌、仙台、郡山、新潟、東京、横浜、千葉、浜松、名古屋、松本、大阪、京都、神戸、岡山、広島、松山、福岡、北九州、熊本、大分、那覇 |
日本以外の開催国 | 中国、香港、台湾、韓国、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、インド、シンガポール、アメリカ、メキシコ、ブラジル、フランス、イングランド、ドイツ、イタリア |
ホームページ | https://www.kanken.or.jp/bjt/ |
ONiT (口頭ビジネス日本語試験)
ONiTはOral Nihongo Test(口頭ビジネス日本語試験)の略称で、主に日本語を母語としない方を対象とした、ビジネス場面における日本語の「話す」力をコンピュータを用いて測定する試験(CBT)です。問題は音声や画像で提示されています。
ONiTは、社内で使用する伝言・報告・連絡・相談などの場面、社外における商談・打合せ・会議などの場面を通じて、ビジネス場面における日本語スピーキング能力を測る実践的なパフォーマンステストとなっています。
ONiTは0~300点の点数(スコア)と、1~7の7段階のレベルで評価され、CEFRのどのレベルに相当するか(主にB1、B2、C1、C2)の目安も評価レポートに表示されます。分析的評価では発音、文法、語彙、聞き手への配慮、構成、流暢さの6つの観点から評価し、口頭能力のバランスを確認することができます。詳細な評価レポートは受験後の学習にも役立ちます。
試験詳細
開催スケジュール | 随時 |
受験料 コンサルティング |
15,000円+税 5,000円+税(受験結果をもとにした受験者へのコンサルティング) |
出題内容 | ・状況説明能力 ・指示確認能力 ・伝言能力 ・状況連絡能力 ・確認能力(メール) ・報告相談能力 ・意見説明能力(表) ・報告能力 ・敬語運用能力 ・反対意見説明能力(グラフ) ・解決方法提案能力 ・意見・根拠説明能力 |
受験会場 | ・東京都杉並区 ・ZOOM(企業・団体受験のみ。条件あり) |
ホームページ | https://oralnihongotest.org |
まとめ
ビジネスレベルの日本語が話せる外国人は、日本企業で仕事をする上で活躍できるチャンスが増えます。また日本企業で管理職を目指すなら、日本人の部下も抱えることもあり、ネイティブに近い日本語が求められるでしょう。将来のキャリアアップのため、より高度な日本語を身に着けたい人は、今回紹介した日本語の資格をチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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