コラム

経団連が就職活動ルールを廃止。その理由と賛否両論まとめ

日本を代表する大手企業ら約1,400社が加盟する経団連(日本経済団体連合会)の会長を務める中西宏明氏は10月9日、2021年春入社以降の新卒学生を対象に、新卒採用活動の日程を決める「採用選考に関する指針」、いわゆる就活ルールを廃止すると正式に発表しました。

これまで、経団連は加盟企業らに対し、採用広報活動の開始は大学3年生の3月から、採用選考の開始は大学4年生の6月から開始するというルールを遵守するように求めてきましたが、今回の就活ルール廃止の発表により、今後は経団連ではなく政府が主導となって新たなルールづくりに取り組む形となります。

今回は、この就活ルールをめぐる議論について分かりやすく整理したいと思います。

なぜ就活ルールがあったのか?

そもそも、経団連はなぜ企業に対して採用活動の時期を制限するルールを設けていたのでしょうか?その理由は大きく分けて二つあります。一つは、学生の学業に対する影響、そしてもう一つは公平な選考の担保です。

企業が他社よりも優秀な学生を囲い込もうと採用活動を早期化すればするほど、学生は説明会や面接への参加により学業へ集中できなくなってしまうという懸念がありました。また、採用活動を開始する時期を揃えることで、企業ら採用活動における公平性を担保しつつ、学生の就職活動の効率を高めるという目的もありました。

なぜ廃止するのか?

しかし、この就活ルールはあくまで指針であり、ルールを破ったとしても企業に罰則が科されることはありません。また、経団連に所属していない外資系企業やベンチャー企業などはルールを守る必要もありません。そのため、実際には経団連が定めたルールが形骸化してしまい、結果として優秀な学生が外資系企業によって青田買いされるという事態が続いていました。

また、経済のグローバル化が進み、市場の変化スピードも速まるなか、従来の「新卒一括採用」という日本特有の雇用慣行が、世界の潮流に合わなくなってきているという事情もありました。

就活ルール廃止の背景には、経済や働き方の変化に合わせてより柔軟な採用活動ができるようにすることで日本企業の競争力を高めたいという意図もあります。

就活ルールの廃止に対する賛否両論

就活ルール廃止に対する主な賛成意見としては、「就職活動においては情報収集が鍵を握るため、早くから動けることは企業だけではなく学生にとってもプラス」「企業はより柔軟な採用活動が可能になる」といった声が挙がっています。

たしかに、現行の就職活動では、採用活動が解禁されてから数週間のうちに一気に複数の企業から内定が出て、学生はじっくりと考える時間もないまま短期間で自分の将来を大きく左右する意思決定を迫られるという状況がありました。

企業がそれぞれのタイミングで自由に採用活動を行い、学生側も自分に合ったタイミングと期間で就職活動ができるようになれば、こうした弊害はなくなり、企業も学生もより納得感を持って採用活動を終えることができるようになるかもしれません。

一方で、就活ルールを廃止することに対する反対意見としては、「就活ルール廃止によりこれまでの採用活動の流れが大きく変わることで、短期的には学生が混乱する可能性がある」「採用活動の早期化に伴い学生の学業に悪影響が出る」といった声も挙がっています。

就職活動の早期化による学業への悪影響については、大学側が大きく懸念しているポイントです。学生の本分はあくまで学業であり、就職活動によって学業が疎かになってしまっては意味がありません。

この問題を解決するためには、企業側が採用基準において学業成績を重視し、しっかりと学業に励んでいる学生を高く評価し、積極的に採用するという形へと基準を変えていく必要があると言えそうです。

まとめ

「新卒一括採用」は、日本の高度経済成長を支えた日本企業特有の雇用慣行の一つでした。このシステムは「定年制」「年功序列」「ジョブローテーション」といったその他の雇用慣行システムとセットになることで日本企業の競争力の源泉となってきましたが、いまや経済、社会環境の変化によりこれらのシステムは過去のものとなりつつあります。

今後も日本企業が国際競争力を維持、向上するためには優秀な外国人の採用が必須となっていることを考えると、採用活動もよりグローバルスタンダードな形へと進化していく必要があると言えるのではないでしょうか?

【参考記事】定例記者会見における中西会長発言要旨

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jopus編集部

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